TNFDに基づく開示

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『自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)』
提言に沿った情報開示

TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)

TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)とは、企業や金融機関が、自然資本や生物多様性に関するリスクと機会を適切に評価し、投資家などへ報告・開示するための枠組みを構築する国際的なイニシアチブであり、2023年9月にフレームワークv1.0を公表しています。

当社は、自然資本や生物多様性を重要な課題と認識し、TNFDに基づいた取り組みを開始することを2025年1月の取締役会にて確認いたしました。
また2025年10月にはTNFDに関する最新情報を共有し、情報開示枠組みの構築の支援を行う組織である「TNFDフォーラム」に参画、2026年1月にはTNFDに沿った情報開示を公約する「TNFD Adopter」に登録いたしました。

今回は初回開示であり、途中経過ではありますが、現在までの取り組みの結果を、2025年3月末時点のデータに基づき開示いたします。

【参照】
TNFD WEBページ(英文):https://tnfd.global/
TNFDフォーラムWEBページ(英文):https://tnfd.global/engage/tnfd-forum/
TNFD AdopterリストWEBページ(英文):https://tnfd.global/engage/tnfd-adopters-list/

TNFDの一般要件

1. マテリアリティの適用

当社は、財務的マテリアリティに加え、自然資本/生物多様性に与える影響(インパクト・マテリアリティ)についても分析・評価を行い、ダブルマテリアリティの考え方を適用しています。

2. 開示のスコープ

本開示においては、当社グループの事業である家庭電化製品並びに関連商品販売の直接操業を主な分析の対象としております(一部バリューチェーン上流の依存・インパクト分析も実施しております)。今後はバリューチェーン全体を分析対象としていく予定です。

3. 自然関連課題がある地域

直接操業552店舗(2025年3月末時点)から100店舗を抽出し、TNFDの推奨ツールであるIBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool:生物多様性統合評価ツール)を用いて地域特性を分析・評価しました。

IBAT:国連環境計画(UNEP)等が参加する生物多様性プロジェクト「IBAT Alliance」で開発されたデータベース

4. 他のサステナビリティ関連の開示の統合

現在は個別に開示しておりますが、TNFDは先行しておりますTCFDと整合する枠組みであり、気候変動と自然資本/生物多様性は密接に関係しているため、今後は開示内容を統合することを検討しております。

5. 考慮する対象期間

本統合報告書においては短期を現在~2026年、中期を2026~2030年、長期を2030~2050年と設定しております。

6. 組織の自然関連課題の特定と評価における先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント

当社では、グローバルコンパクト・ネットワーク・ジャパンの「CSR調達セルフ・アセスメント質問票」を用いて取引先へのアンケート調査を行い、ステークホルダーの方々への人権への影響確認に取り組んでおります。
また地域社会の一員として、自社の環境活動の取り組みを進めるとともに地域社会とのエンゲージメントにも取り組んでまいります。

ガバナンス

当社は、自然資本/生物多様性を含むサステナビリティに関するグループ全体での情報共有化及び対応方針の検討、取締役会において決定された対応方針の推進・進捗状況のモニタリングを目的としたサステナビリティ委員会を設置しております。
参加者は当社取締役、各グループ会社社長並びに当社各本部長とし、委員長はサステナビリティに関する責任者と位置付けています。この会議において検討された結果は取締役会に報告され、取締役会では、対応方針を決定します。
また、取締役会はサステナビリティ委員会から対応や進捗などの報告を受け、自然資本/生物多様性の取り組みを監督しています。なお、このガバナンス体制に基づき2025年1月の取締役会において、サステナビリティ委員会より報告されたTNFDに基づいた取り組みの開始及び2026年度までのTNFD対応計画を確認しております。

リスクとインパクトの管理

(リスク管理プロセス)

当社は、「TCFD提言に沿った情報開示」に記載しております「当社グループの気候関連マネジメント体制・リスク管理プロセス」を自然資本/生物多様性についても適用します。

【参照】ケーズホールディングスコーポレートサイト ガバナンス/リスク管理
https://www.ksdenki.co.jp/sustainability/environment/governance_risk/

CSR部が下記の「リスクとインパクトを特定するプロセス」により自然への依存とインパクト、リスクと機会を特定し、リスク全般管理部門である経営企画室に報告、全体リスク管理に統合されます。
統合された情報は、経営企画室よりサステナビリティ委員会に報告され、グループ全体での情報共有化及び対応方針の検討・取組の推進が行われます。
サステナビリティ委員会での議論は取締役会へ報告され、それを受けて取締役会が最終的な対応方針を決定し、推進・進捗状況のモニタリングを行うサステナビリティ委員会を監督する形となります。

(リスクとインパクトを特定するプロセス)

当社は、当社の事業(家庭電化製品の販売並びに関連商品販売)を対象として、自然への依存とインパクト、リスクと機会を特定するため、TNFDが推奨するLEAPアプローチに沿った分析・評価を行います。対象はバリューチェーン全体ですが、今回においては、主に直接操業について実施しております。

LEAPアプローチ:
TNFDにより開発された自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)の4つのステップで構成されています。

戦略

LEAPアプローチ

①「Locate」

「生物多様性における重要性」「水リスク」の観点から地域特性の分析・評価を行いました。
分析・評価に当たってはTNFD推奨ツールを使用し、「生物多様性における重要性」はIBAT、「水リスク」はAqueductを使用しました。

Aqueduct:世界資源研究所(WRI)が提供する水リスク分析ツール

(IBATによる「生物多様性における重要性」分析)
対象拠点:
直接操業店舗のうち立地等により100店舗を選定
(IBATが対象地点から50㎞範囲内を分析するため範囲の重複を考慮)
確認データ:
IUCNレッドリスト種数、PA(保護区)数、
KBA(生物多様性の保全上重要な地域)数
《各データ最も多かった拠点》

以下の表は横にスクロールできます

所在地 IUCN数 PA数 KBA数
東京都 2267 440 9
愛知県 2238 107 12
鹿児島県 2750 95 4

地域により差はあるものの、大都市圏の店舗の方が保護すべき生物種数・保護区数が多い=生物多様性における重要性が高いという結果になりました。
なお、各指標の最も多かった3店舗についてはIBATのSTAR(種の脅威軽減と回復の指標)を用いて種の絶滅リスクの削減に貢献する地域であるかを確認、その結果、最も種の絶滅リスクの削減に貢献する地域に立地していると考えられるのは所在地が東京都の店舗でした。

(Aqueductによる「水リスク」分析)
対象拠点:
国内全拠点
確認リスク:
全体的水リスク、水ストレス、河川洪水リスク

各リスクの分析結果は以下の通りです。

《各リスクの分析結果》

以下の表は横にスクロールできます

リスク 分析結果
全体的水リスク 北海道と九州南部が「Low」、他の地域では「Low-medium」
水ストレス 東北の岩手県、関東、中部の太平洋側が「Medium-high」となっており中程度のリスクがあり、他の地域は「Low-medium」または「Low」。
河川洪水リスク 新潟県の佐渡と熊本県の沿岸部が「High」とリスクが高くなっており、東北、中部、四国、九州に「Medium-high」の中程度のリスクの地域があり、他の地域は「Low-medium」または「Low」となっております。

②「Evaluate」

自然資本/生物多様性に対する依存とインパクトについて、TNFD推奨ツールであるENCOREを用いて直接操業とバリューチェーン上流(メーカー)を対象に分析を行いました。

ENCORE:国連環境計画(UNEP)などによって開発された自然関連の依存とインパクトを分析するツール
(本報告の分析には2024年7月以降のアップデート版を使用しております)

(ENCOREによる分析結果)
VH Very High
(とても高い)
H High
(高い)
M Medium
(中程度)
L Low
(低い)
VL Very Low
(とても低い)
《依存》

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事業
バリューチェーン
生態系サービス
水供給
洪水緩和
降雨パターン調節
固形廃棄物の浄化
暴風雨緩和
水流調節
水浄化
土壌及び堆積物の保持
地域気候調節
空気ろ過
生態系防除
地球規模の気候調節
大気及び生態系における希釈
騒音低減
感覚的影響の調整(騒音以外)
家庭電化製品販売
直接操業
L M VL M M M L VL VL VL
上流
M M M M M M M L L VL VL L VL VL

25に分類されている生態系サービスのうち依存している生態系サービスは直接操業で10、上流(一次 サプライヤー)で14、いずれも重要度は「Medium(中程度)」が最も高く、「Very High(非常に高い)」、「High(高い)」生態系サービスはありませんでした。

《インパクト》

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事業
バリューチェーン
インパクト要因
温室効果ガスの排出
物質の排出
温室効果ガス以外の大気汚染
水使用量
土地利用面積
妨害(例:騒音・光)
水や土壌への有毒汚染物質の排出
固形廃棄物の生成と排出
家庭電化製品販売 直接操業 M M M L VL VL VL
上流 M M M L M H L

13に分類されているインパクト要因のうち影響を与えているものは直接操業・上流(メーカー)いずれも7、そのうち、重要度が「Very High(非常に高い)」はなく、「High(高い)」は上流において「水や土壌への有毒汚染物質の排出」が該当、「Medium(中程度)」は直接操業3、上流4となっております。

(依存・インパクトの概要)

直接操業における重要度が「Medium(中程度)」となったのは、調節・緩和サービスへの依存、温室効果ガス等の排出のインパクトであり、気候変動との関連性が高いという結果でした。
また、上流(メーカー)においては、直接操業より依存・インパクトの重要度の高いものが多く、特に排出による汚染のインパクトが高いという結果になりました。

③「Asess」

Evaluteで特定した依存・インパクトを踏まえるとともに、推奨ツールであるWWF BRF(Biodiversity Risk Filter)を用いて、直接操業についてセクターレベル及びLocateで分析した地域・拠点レベルでのリスクを評価いたしました。

WWF BRF(Biodiversity Risk Filter):WWFが提供する生物多様性に関連するリスクと機会を特定・評価・管理するためのツール

(WWF BRFによる分析結果)

※セクターレベルで
重要度が「Medium(中程度)」以上抜粋

H High
(高い)
M Medium
(中程度)
《WWF BRFによる分析結果》

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リスクタイプ カテゴリ 指標 重要度
セクター 地域・拠点
物理的リスク 調整サービス
(緩和)
地滑り M 東北北部日本海側、関東南部・中部・近畿・中国・四国・九州の各地に「Very High」の地域あり
森林火災の危険 M 宮城県・茨城県・九州北部に「High」の地域あり
猛暑 M 関東・中部・福岡県に「High」の地域あり
熱帯性低気圧 M 当該リスクは日本全域が「Very High」となっております
物理的リスク 生物多様性への
圧力
汚染 H 淡水においては関東・中部・近畿に「High」の地域があり、海水においては九州北部に「Very High」の地域あり
評判リスク 追加評判要因 メディア M 当該リスクの日本のリスクレベルは「High」となっております

分析の結果、地域・拠点レベルにおいてはセクターレベルよりも、より高いリスクがあると認識しております。以上の分析結果を踏まえ、当社は以下のように直接操業における自然資本/生物多様性に関するリスク・機会を特定し、短期から長期にわたって定性的に評価いたしました。

《当社グループの家電製品販売事業における自然資本/生物多様性に関するリスク・機会》

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リスク・機会の種類 リスク・機会の内容 時間枠 影響度
短期 中期 長期


物理的リスク 急性
  • 台風、洪水、地滑り、森林火災等による店舗の被害や、それに伴う休業による売上の減少
慢性
  • 気温上昇(猛暑等)に伴うエネルギーコストの上昇や従業員の健康への悪影響
移行リスク 政策
  • 温室効果ガス排出に対する規制強化によるコストの増加
  • 製造段階等において自然へのインパクト(汚染)の大きい製品に対する規制による製造中止
市場
  • 環境配慮型製品の需要増加等、市場の変化への対応の遅れによる成長機会の損失
  • 製造段階等において自然へのインパクト(汚染)の大きい製品に対する需要の低下
評判
  • 温室効果ガス削減が不十分であることに対するレピュテーション低下
  • 廃棄物の増加や適切な処理がなされないことによるレピュテーション低下

資源効率
  • 輸送の効率化によるコスト削減及び温室効果ガス排出量削減
  • 廃棄物の削減によるコスト削減及び自然へのインパクトの減少
市場
  • 環境配慮型商品や災害対策商品の需要増加等、市場の変化への適切な対応による売上の増加
評判
  • 自然関連の取り組みや開示促進によるレピュテーション向上
自然資源の持続
可能な利用
  • DXによる紙製品の使用削減、リサイクル素材利用増加に伴う店舗ブランド価値の向上

時間枠:各リスク・機会が顕在化すると考えられる時間枠を示しております

④「Prepare」

(リスク・機会への対応)

特定されたリスク・機会は、気候変動との関連性が高いものが多く、再生可能エネルギー利用等、温室効果ガス排出量削減や災害対策等、気候変動で講じている対策が有効と考えられます。
「汚染(廃棄物)」に関する対応についても既に取り組みを始めております発泡スチロールのリサイクル等、廃棄物削減によりリスクに対応し、機会獲得に繋げることができると考えております。

(対応例)
対応策(リスク①)<災害対策>

これまでの被災の経験から、リスクの高い店舗には災害対策設備(止水板等)を設置する等、被害の防止・軽減化に努めております。また出店に際しては、ハザードマップから水災リスクを確認し、それによりGL(地盤面の高さ)やFL(床面の高さ)を上げる等の対策をしております。なお、商品・設備の被害に対しては全ての店舗・事業所が損害保険に加入しており、保険金額の範囲内で補填されるようになっております。

対応策(リスク③⑦)<再生可能エネルギー利用促進による温室効果ガス排出量削減>

温室効果ガス排出量削減のため2022年7月から本社の電力利用の100%を再生可能エネルギーとしました。また店舗においては自己投資やオンサイトPPAによる太陽光発電設備の設置に取り組んでおり、発電した電力を店舗で使用しています。

ケーズホールディングス本社外観・東広島店外観
対応策(リスク⑦・機会②)<廃棄物削減>

当社は、発泡スチロール減容機を全国14の配送センターに導入し(2025年3月末時点)、家電製品の梱包材として使用される発泡スチロールのリサイクルを行っております。
産業廃棄物として廃棄される発泡スチロールを減容、インゴット化し、良質なリサイクル原料として再生することで、廃プラスチックの削減や運搬時の温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおります。

梱包材をインゴット化(リサイクル)しているBefore Afterの写真

測定指標・ターゲット

TNFDが推奨するグローバル中核開示指標より、以下の指標が当社の依存・インパクトとリスク・機会に該当するものと認識しております(TCFD提言に沿って開示している温室効果ガス排出量は除いております)。今後は指標のデータ収集・実績値の開示・目標の設定に向けて検討を進めてまいります。

《当社グループの自然関連の依存・インパクトに関するグローバル開示指標と測定指標》

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測定指標番号 自然の変化の要因 指標 測定指標
C2.2 汚染/汚染除去 廃棄物の発生と処理 有害および非有害廃棄物の種類別の総発生量(トン)
《当社グループの自然関連のリスク・機会に関するグローバル開示指標と測定指標》

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測定指標番号 カテゴリー 測定指標
C7.0 リスク 自然関連の移行リスクに対して脆弱であると評価される資産、負債、収益および費用の金額(合計及び合計に占める割合)
C7.1 自然関連の物理的リスクに対して脆弱であると評価される資産、負債、収益および費用の金額(合計及び合計に占める割合)
C7.3 機会 機会の種類別に、自然関連の機会に向けて展開された資本支出、資金調達または投資額
C7.4 自然に対して実証可能なプラスのインパクトをもたらす製品およびサービスからの収益の増加とその割合、ならびにそのインパクトについての説明

今後の取り組み

TNFDに沿った情報開示の取り組みは今回が初回であり、内容は直接操業を中心とした定性評価等、これまでに実施した取り組みとなっております。
これまでの分析結果においては、当社グループの事業における自然資本/生物多様性の依存・インパクト、リスク・機会は、気候変動と関連性が高く、対応も共通していると考えられます。今後はTCFD提言に沿った情報開示との統合も視野において、バリューチェーン全体の分析やリスク・機会の定量化、指標の開示、目標の設定等、取組みの検討を進めてまいります。