戦略/指標・目標

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戦略

当社は、気候関連リスク・機会の検討を行うにあたり、以下のように時間枠を短期、中期、長期にわたって規定しました。

気候関連リスク・機会検討における
時間枠の定義

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短期 中期 長期
2023〜2026年 2026〜2030年 2030〜2050年

この時間枠においてTCFD提言に基づいてリスク・機会の検討を行い特定しました。また、その影響を複数の気候関連シナリオのパラメータを参照することにより、定量的にも把握しています。参照したシナリオは、移行リスクの場合は温度上昇の小さい方が、物理的リスクの場合は温度上昇の大きい方がより影響度が大きくなるため、影響度を過小評価しないよう移行リスクに関しては1.5℃シナリオを、物理的リスクに関しては、4℃シナリオを用いております。

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想定する温度上昇と引用したシナリオ
想定する温度上昇 引用したシナリオ
1.5℃ NZE2050(Net Zero Emissions by 2050)シナリオ

IEA(国際エネルギー機関)WEO(World Energy Outlook)2023より引用

4℃ RCP(Representative Concentration Pathways)8.5

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書より引用

当社が特定した主な気候関連リスク・機会

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リスク・機会の種類 当社のリスク・機会の概要 影響度
リスク 移行リスク 政策と法 炭素税(カーボンプライシング)等、温室効果ガス排出量規制の強化によるコスト増加
市場 環境配慮型商品の需要増加等、市場の変化への対応の遅れによる成長機会の喪失
評判 気候変動への対応・開示が不十分であることによるレピュテーション低下
物理的リスク 急性 地球温暖化に伴う風水害の激甚化による店舗への直接的損害や物流ルートへの影響による売上減少
慢性 地球温暖化に伴う猛暑日の増加によるエネルギーコストの増加並びに熱中症等、従業員の健康への悪影響による生産性低下
機会 資源効率 輸送の効率化(輸送網の集約、車両の他社との共同利用等)によるコスト削減および排出量削減
市場 環境配慮型商品や災害対策商品の需要増加等、市場の変化への適切な対応による売上増加

上記のリスクと機会の双方に環境配慮型商品の需要増があるように、リスクに対して適切な対応を行うことが機会の獲得につながると当社は考えております。当社は気候関連のリスクに対して積極的に取り組み、成長機会の獲得を目指します。

リスク・機会による財務影響・対応策

① 移行リスク・機会

当社は、特定した移行リスク・機会の内、日本国内における炭素税(カーボンプライシング)等、温室効果ガス排出量規制の強化によるコスト増加を特に大きな影響を与えるものとして考えています。当社グループに与えるその影響を定量的に捉えるため、WEO2023より1.5℃シナリオのNZE2050における2030年時点を想定した炭素価格を引用して試算しました。

2030年を想定した当社グループへの影響

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①炭素税価格(千円 /t-CO2) ②当社グループ排出量(t-CO2) 炭素税によるコスト増 ①×②(千円)
21.0 134,711 2,828,931
  • 試算にあたっての前提条件
    • 炭素税価格:140USD/t-CO2(1USD=150円で換算)
      WEO2023のNZE2050シナリオにおける2030年時点のネットゼロ誓約先進国の炭素価格140USD/t-CO2を引用しております。
    • 当社グループ排出量:2023年度の当社グループ Scope1+Scope2合計値
試算の結果、約28億円のコスト増加が新たに発生するリスクがあると認識しています。
リスク対応策
排出量削減に取り組むことが不可欠であることから、当社では、従来から行っている店舗の省エネ化(LED照明等の高効率設備およびエネルギー管理システム導入等)を継続するとともに、再生可能エネルギー利用に取り組み、排出量の削減対策を強化いたします。(対策の一環として2022年8月より本社に再生可能エネルギー電力を導入、また店舗においても太陽光発電を導入予定です)

② 物理的リスク・機会

当社は、特定した物理的リスク・機会の内、地球温暖化に伴う風水害の激甚化による店舗への直接的損害や売上減少を特に大きな影響を与えるものとして考えています。既に台風や局地的な豪雨など極端な気象現象の発生が増加していますが、今後、地球温暖化の進行に伴い、温度上昇の大きいシナリオでは、特にその傾向が強まります。
当社グループに与えるその影響を定量的に捉えるため、IPCCの第5次報告書において4℃シナリオ(RCP8.5)における2046~2065年時点の世界平均気温が1986~2005年と比較して平均で2℃上昇すると予測されていることから、2050年時点で現在気温から2℃上昇すると仮定し、国土交通省「気候変動を踏まえた治水計画のありかた提言」より2℃上昇時における洪水発生頻度の変化を引用して試算しました。

2050年を想定した当社グループへの影響

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①過去の洪水被害(千円) ②2℃上昇時の洪水発生頻度 洪水被害予測 ①×②(千円)
1,100,000 2倍 2,200,000
  • 試算にあたっての前提条件
    • 過去の洪水被害:2019年に洪水により約6億円の商品・設備被害(保険金支払実績より推計)、休業による約5億円の売上減少(休業店舗の前年同期間の売上より推計)、合計約11億円の被害が発生したことを前提条件としています。
    • 2℃上昇時の洪水発生頻度:「気候変動を踏まえた治水計画のありかた提言」によると、2℃上昇時の降雨量は1.1倍、洪水発生頻度は約2倍とされています。
      なおRCP8.5で21世紀末に4℃上昇となった場合、その際の降雨量は1.3倍、洪水発生頻度は約4倍とされています。
試算の結果、約22億円の商品・設備被害および売上減少が発生するリスクと認識しています。
リスク対応策
これまでの被災の経験から、リスクの高い店舗には災害対策設備(止水板等)を設置する等、被害の防止・軽減化に努めており、特に九州地区の店舗においては、2021年8月の線状降水帯による豪雨の際に止水板により店内への浸水を防止した実績もあり、効果が表れております。また出店に際しては、ハザードマップから水災リスクを確認し、それによりGL(地盤面の高さ)やFL(床面の高さ)を上げる等の対策をしております。なお、商品・設備の被害に対しては全ての店舗・事業所が損害保険に加入しており、保険金額の範囲内で補填されるようになっております。

ケーズデンキグループ2050年カーボンニュートラル移行計画

(2024年3月21日策定)

ケーズデンキグループは、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと認識しております。
中長期的な企業価値の創出と持続可能な社会の実現に貢献し、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えるため、以下の通り温室効果ガス削減目標を定め、取り組んでまいります。

ケーズデンキグループの排出量削減目標

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目標年度 目標内容
2030年度 温室効果ガス排出量(Scope1.2)50%削減(2013年度比)を目指す
2050年度 温室効果ガス排出量(Scope1.2)カーボンニュートラル

ケーズデンキグループ2050年カーボンニュートラル移行計画

これまでは省エネルギー(効率化)に重点的に取り組み、2013年度比で店舗数が415店舗⇒546店舗と32%成長する中、Scope1.2排出量は7.3%削減となっておりました。今後は再生可能エネルギーの導入を促進し、2030年度の中間目標および2050年度のカーボンニュートラルに向けて取り組みます。

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Scope1.2排出量合計の2022年度までの実績と、2030年度・2050年度までの移行計画のグラフ 詳細は次の表に記載
時間枠 計画策定以前(実績) 短期 中期 長期
2013年度 2022年度 ~2026年度 ~2030年度 2050年度
Scope1.2
排出量
(t-CO2)
148,787 137,900 2030年度
2013年度比50%削減
Scope1.2
カーボンニュートラル
重点対応策
《省エネルギー推進》・・・効率化
  • 事業所への省エネルギー設備(LED照明、BEMS等)導入
  • 省エネガイドラインによる事業所の省エネルギー推進
《再生可能エネルギー利用促進:フェイズ1》
  • 新店舗等、設置可能な事業所への再生可能エネルギー設備導入によるScope2削減(自家発電・オンサイトPPA等)
  • 設置不可事業所へのオフサイトPPA・バーチャルPPA等の導入検討
《再生可能エネルギー利用促進:フェイズ2》
  • 店舗のスクラップ&ビルドに伴い、再生可能エネルギー導入店舗を2050年度までに100%とする
  • 蓄電システム等を導入し、再生可能エネルギー使用割合を高める

指標・目標

気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

当社は、気候関連リスク・機会を管理するための指標としてScope1(燃料の使用に伴う排出量)、Scope2(他者から供給された電気・熱の使用に伴う排出量)を用いております。Scope3(サプライチェーン全体の排出量)については、2021年度に7カテゴリから算定をスタートし、2022年度以降は関連性のない2カテゴリを除く全カテゴリを算定しております。

温室効果ガス排出量:当社グループScope1.2(マーケット基準)実績

当社グループの2023 年度のScope1・2 排出量合計は134,711 t-CO2となり、2022 年度と比較すると3,189t(2.3%)削減となりました。なお、2020年度(Scope1・2排出量合計158,028t)比では23,317t(14.7%)の削減となっております。

Scope1.2実績(算定範囲:当社グループ全事業所)

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  Scope1 排出量(t-CO2) Scope2 排出量(t-CO2) Scope1・Scope2合計
(t-CO2)
2022年度 20,492 117,408 137,900
2023年度 18,975 115,736 134,711
増減 ▲1,517 ▲1,672 ▲3,189
増減率 ▲7.4% ▲1.4% ▲2.3%

当社グループScope1.2排出量の第三者検証実施について

当社グループは、今後の脱炭素化に向けて、2022年度よりScope1.2排出量の第三者検証を一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)に依頼し、保証を取得しております。当社グループは引き続き、開示する実績の客観性を確保し、信頼性向上につなげてまいります。

温室効果ガス排出量:当社グループScope3算定結果

当社グループの2023年度のScope3総量は約1,061万t、カテゴリ別では「11. 販売した製品の使用」が約782万t、次いで「1. 購入した製品・サービス」が約258万tとなり、両カテゴリで構成比の約98%を占めました。
 特にカテゴリ11 の影響度が極めて高いことから、当社グループのScope3削減にあたっては、より省エネ性能の高い商品の販売構成比を高めることが有効であり、特にカテゴリ11内で最も構成比の高いエアコンにおいての取り組みが重要と考えています(エアコンのカテゴリ11内の構成比:約67%)。
 当社は、引き続き省エネ性能の高いエアコンの販売促進に注力してまいります。

Scope3算定結果

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カテゴリ 排出量(t-CO2)
上流 1 購入した製品・サービス 2,584,109
2 資本財 54,105
3 Scope1.2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 22,550
4 輸送、配送(上流) 48,658
5 事業から出る廃棄物 22,669
6 出張 880
7 雇用者の通勤 12,437
8 リース資産(上流) Scope1.2に含んでいます
下流 9 輸送、配送(下流) カテゴリ4に含んでいます
10 販売した製品の加工 関連性なし
11 販売した製品の使用 7,822,954
12 販売した製品の廃棄 33,770
13 リース資産(下流) 5,488
14 フランチャイズ 542
15 投資 関連性なし
合計 10,608,162

気候関連リスク・機会の管理に用いる目標

当社は、2007年度からScope2排出量をもとに原単位(売り場面積当たりの排出量)削減を目標として取り組み、省エネ・効率化に成果を上げてまいりました(2022年度には2007年度比で69.6%削減)。
当社は更なる取り組みとして、戦略にも記載の通り2024年3月に中長期的な企業価値の創出と持続可能な社会の実現に貢献し、気温上昇を1.5℃以下に抑えるため、温室効果ガス排出量(Scope1.2)の2050年カーボンニュートラルに向けた中長期削減目標を設定いたしました。
その中間目標として2030年度までに、温室効果ガス排出量(Scope1.2)を2013年度比で50%削減することを目指します。

これまで成果を上げてきた店内外照明のLED化やBEMS(エネルギー管理システム)導入等による効率化を継続するとともに、再生可能エネルギーの導入を促進し、排出量削減に取り組みを進めてまいります。

当社グループの気候関連リスク・機会の管理に用いる目標

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指標 目標年度 目標
温室効果ガス排出量
(Scope1.2)
2050 (Scope1.2)カーボンニュートラル
2030 (Scope1.2)50%削減(2013年度比)を目指す

基準年度実績および目標排出量

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指標 基準年度 目標年度
2013年度 2030年度 2050年度
Scope1.2排出量(t-CO2) 148,787 74,393 カーボンニュートラル

今後は、Scope1.2排出量削減目標に取り組むとともに、業界団体である大手家電流通協会やサプライヤーと連携してサプライチェーン全体(Scope3)のカーボンニュートラルに向けても取り組んでまいります。

今後の取り組み

当社は、2021年のTCFD提言への賛同に続き、2023年9月に「気候変動イニシアティブ」に参加し、「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」宣言に賛同いたしました。脱炭素社会への実現に向けて、家電量販店として店舗・事業所からの排出量削減に継続的に取り組むとともに、省エネ型製品の販売促進により、家庭部門の排出量削減に貢献すべく、取り組んでまいります。当社は、これらの取り組みを通じて、引き続き気候関連のリスクに積極的に対応し、成長機会の獲得につなげてまいります。